江戸川乱歩『芋虫』を徹底解説|初めて読む人向けあらすじ・テーマ解説【Audible対応】

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江戸川乱歩の『芋虫』の「本物」は、1929年(昭和4年)に雑誌『新青年』1月号へ掲載された初出原稿です。当時は編集部の意向で題名が『悪夢』と改められ、伏字だらけで発表されましたが、乱歩自身は後に題名を『芋虫』へ戻しています。


この記事では 初めて乱歩を読む人でも理解できるように、あらすじ・主題・時代背景・Audible版の魅力まで分かりやすく解説します。
※本作『芋虫』には、暴力・身体損傷・心理的に強い描写が含まれます。
初めて読む方はご注意ください。

『芋虫』とは?戦前に“発禁”となった江戸川乱歩の問題作

【芋虫】オーデブルの表紙画像

『芋虫』は1929年(昭和4年)に発表された江戸川乱歩の短編で、軍人の夫とその妻を描いた、心理的残酷さが際立つ異色作です(純文学のすすめ
戦争直後の社会情勢や検閲の影響もあり、その刺激的な内容から 戦前に発禁処分となった作品 として知られています(研究論文や史料国立国会図書館
現在では全集や文庫、オーディオブックなどで広く読まれており、「乱歩の怪奇文学を象徴する傑作」と評価されています。

『芋虫』のあらすじ(ネタバレなし)

戦地で重傷を負い、四肢を失って生還した夫と、献身的に看病する妻。
しかし二人の関係は、表向きの「美談」とは異なる方向へ進んでいきます。
夫は身体も言葉も奪われ、感情すら伝えられない。一方、献身的に見える妻の内側には、誰にも知られていなかった“暗い衝動”が芽生え始めます。

読む(聴く)ほどに、日常がじわじわと壊れていくような、不気味な緊張感が続く――そんな作品です。

『芋虫』が恐ろしいと言われる理由(テーマ解説)

『芋虫』が長年読み継がれている理由は「残酷さ」だけではありません。
作品が突きつけるテーマには次のようなものがあります。

  • 人間の奥に潜む加虐性(サディズム)
  • 戦争が奪う尊厳とアイデンティティ
  • 夫婦という密室で起きる力関係の崩壊
  • “世間の目”が生む偽りの美談

表面的な恐怖だけでなく、心理・倫理・社会背景といった多層的な読み方ができるのが、この作品の奥深さです。

① 心理描写のリアルさ

乱歩は外見的な恐怖ではなく、登場人物の「内面の変化」を細かく描きます。
読者は次第に “何かがおかしい” と気づき、じわじわと恐怖が迫ってきます。

② 夫婦関係の歪み

介護・憎悪・依存・支配といった、生々しい情感が物語の根底にあります。
乱歩作品の中でも「人間の弱さ」が強烈に描かれた一作です。

③ 反戦文学としての側面

戦争が生む悲劇を直接的ではなく “家庭の崩壊” を通して表現しており、文学としても高い評価を受けています。

戦前に“発禁”となった理由

『芋虫』は、当時の社会では非常に衝撃的な内容と受け止められました。
戦争、軍人、身体の損傷、夫婦の関係など「描写が直接的すぎる」と判断され、検閲により発禁となった経緯があります。

参考:『芋虫』の検閲・発禁処分については、戦前の出版検閲を扱った以下の学術資料が参考になります。

※作品の特性上、暴力や性的な支配など、ショッキングな表現が含まれます。苦手な方は注意してお読みください。

逆に言えば、
“真面目に当時の現実を描いたために禁止された文学”
としての価値も高まっています。

『芋虫』は乱歩初心者におすすめできる理由

  • 短編で読みやすい(20〜30分で読める)
  • 登場人物が少なく、ストーリーが追いやすい
  • 心理描写・サスペンス性など、乱歩の魅力が凝縮
  • 発禁処分になるほどの「問題作」で、強烈に記憶に残る

初心者でも「乱歩の面白さ」を短時間で体験できる一作です。

Audible版『芋虫』の魅力|朗読で聴くと理解しやすい

物語の静かな恐怖は、朗読で聴くとむしろ分かりやすく、初心者向けになります。

Audible版『芋虫』2種類ある⁉

①朗読者:プロのナレーター( 斉藤 範子)(文学作品朗読を専門とする声優や俳優が担当)
【芋虫】オーデブルの表紙画像
  • 出版社:【パンローリング株式会社 】一般的な文芸オーディオシリーズに収録
  • 特徴:淡々とした朗読スタイルで、原文を忠実に読み上げるタイプ。作品そのものを静かに味わいたい人向け。
  • 【芋虫】オーデブルページ
  • 再生時間1 時間
② 朗読者:別の声優・俳優が担当(演劇的な表現が強め)
  • 出版社: 【読人舎】ドラマ仕立てのオーディオシリーズに収録されることが多い
  • 特徴:【ナレーター鬼城院 護】聴覚的に「ホラー/怪奇小説」としての迫力を楽しめるタイプ。
  • 【芋虫】オーデブルページ
  • 再生時間54 分

違いのまとめ

**テキストは同じ乱歩の『芋虫』**だが、

①は「文学朗読」寄りでシンプルに作品を味わえる。

②は「ドラマ朗読」寄りで演出や声の芝居が強く、怪奇的な雰囲気を楽しめる。

「本物の乱歩の文章をそのまま聴きたい」なら ①、
「怪奇小説としての迫力を耳で体験したい」なら ② が向いています。

●おすすめポイント

  • プロの声優による抑揚ある語りで心理描写が伝わりやすい
  • 短いので移動時間でも聴ける
  • 再生速度調整(0.7〜1.2倍)で聞き取りやすい

耳だけで聴くオーディブルは集中力が途切れやすく、「あれ?さっき何を聴いたっけ?」と思ったことはありませんか?
なぜオーディブルが頭に入らないのか、その原因と具体的な対処法を、筆者自身の体験も交えて下記の記事で解説しています。

また、イヤホン選びでもオーデブルを快適に聴く事ができます。
ひとこにイヤホンと言っても【ノイキャン】【骨伝導】【ネックスピーカー】など、目的別の選び方とおすすめモデルを紹介。

実は、オーディブルには公式に「家族共有プラン」はありませんが、1つのアカウントを複数のデバイスで共有することは可能です。下記の記事では、実際に家族でオーディブルを共有して感じたメリットと注意点を、体験ベースで7つにまとめてご紹介してます。

読者の声(要約)

実際のレビューをもとにした「一般的な傾向」を整理すると、以下のような感想が多く見られます。

  • 怖いのに止まらない没入感
  • 夫婦の心理描写がリアルでゾッとする
  • 短編とは思えないほどの読後感の強さ
  • Audible版の朗読が作品の怖さを増幅する

「短いのに深い」「人間の闇に触れた感じがする」「乱歩の本気を見た」といった声も多く、強烈な印象を残す作品です。

『芋虫』はこんな人におすすめ

  • 怪奇・心理ホラーが好き
  • 短編で濃厚な読後感を味わいたい
  • 乱歩の“闇の側面”を知りたい
  • Audibleでとにかくインパクトある作品を聴きたい

『芋虫』の次に読むべき乱歩作品3選

『芋虫』が気に入った人へ、次におすすめの短編はこちらです。

①「押絵と旅する男」

江戸川乱歩『押絵と旅する男』は、幻想と現実の境界を揺さぶる短編で、汽車で出会った不思議な男が語る「押絵に恋した兄」の物語が中心です。

「乱歩の探偵小説とは異なる幻想世界への扉」として位置づける作品です♪

【押絵と旅する男】オーディブル作品表紙画像

江戸川乱歩の幻想文学の代表作ともいえる『押絵と旅する男』は、現実と幻影の境界を揺さぶる不思議な物語です。舞台は、富山で蜃気楼を見た帰りの汽車。
主人公「私」が出会うのは、風呂敷から一枚の額を取り出す奇妙な男でした。
その額には、振袖姿の美少女と洋装の老人が押絵細工として描かれており、まるで生きているかのような精巧さを放っています。
男はその絵にまつわる兄の数奇な運命を語り始めます。


兄はかつて浅草十二階から双眼鏡を覗き、偶然目にした押絵の少女に恋をしてしまいます。
やがて双眼鏡を逆さにして覗いた瞬間、彼は絵の世界へと吸い込まれ、少女と共に押絵の一部となってしまうのです。
絵の中で少女は永遠に若いまま、しかし兄は老いていく。
その姿を弟である語り手は旅の道連れとして持ち歩き続けている――幻想と哀愁が交錯する結末は、乱歩ならではの妖しい余韻を残します。


この作品の魅力は、探偵小説の枠を超えた乱歩の「幻想文学」的側面にあります。
蜃気楼や浅草十二階といった当時の都市文化が舞台となり、現実の風景が異界への入口へと変貌する瞬間を描き出す。
愛と老い、虚構と現実、永遠と儚さ――そのすべてが押絵の中に凝縮され、読者を奇妙な旅へと誘います。

②「お勢登場」

この作品は、乱歩の「幻想文学」と「怪奇小説」の魅力を凝縮した一編です。
ブログでは「耳から味わう乱歩の妖艶な恐怖」として紹介すると、読者に強い印象を残せるでしょう。

江戸川乱歩「お勢登場」オーディブル表紙画像

女性狂気系の人気作。

『お勢登場』は、乱歩の代表的な「恐怖小説」のひとつで、美しくも妖しい女性・お勢が中心人物です。彼女は人を惑わせ、破滅へと導く存在として描かれます。物語は、彼女の周囲で起こる奇怪な事件や、人々が彼女に翻弄されていく様子を通して展開され、乱歩独特の耽美的で怪奇的な雰囲気に満ちています。


お勢は単なる悪女ではなく、美と恐怖を併せ持つ象徴的なキャラクター。彼女の登場によって、現実が歪み、日常が異界へと変貌していく――そんな乱歩ならではの幻想的体験が味わえます。

③「人でなしの恋」

乱歩のホラーとして最も有名な短編のひとつ。
江戸川乱歩の短編『人でなしの恋』は、乱歩の幻想文学の中でも特に妖しく、背筋がぞくりとするような愛の物語です。Audible版では朗読によってその怪奇性が一層際立ち、文字では味わえない臨場感を体験できます。

江戸川乱歩の「人でなしの恋」オーディブル表紙画像

物語の主人公は、ある日ふとしたきっかけで美しい人形に恋をしてしまう男です。彼はその人形を妻のように扱い、現実の女性との関係を拒絶し、次第に人形への執着を深めていきます。やがてその愛は狂気へと変わり、現実と幻想の境界が崩れていく――。
乱歩はこの作品で、人間の孤独と欲望、そして愛の異常な形を描き出しました。人形という「生きていない存在」に恋をするという設定は、読者に強烈な不安と魅惑を同時に与えます。

江戸川乱歩 代表作ランキングも合わせてご覧ください♪

ミステリ好きなら一度は聞いたことのある名前――江戸川乱歩とエドガー・アラン・ポー。どちらも「ミステリ」に深く関係しますが、作風や楽しみ方には明確な違いがあります。この記事では、両者の基本プロフィール、作風の違い、名探偵コナンとの関係を整理したうえで、Audibleで今すぐ聴ける初心者向けの代表作をあらすじ+おすすめ理由で紹介してます。

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まとめ|『芋虫』は乱歩初心者に最適な短編

『芋虫』は短く読みやすいにもかかわらず、心理描写とサスペンス性が高い “乱歩の入門に最適な作品” です。

Audible版なら文章に苦手意識がある人でも理解しやすく、
乱歩の世界を体験するのに最良のひとつと言えます。

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